ちょっとしたニュースなどをきっかけに、株価は上がったり、下がったりします。優待目当ての投資の場合でも知っておかなければならない基礎的な用語があります。今回はM&AとTOBについて解説します。
1.M&Aとは
M&Aとは「Merger and Acquisition」の略で、企業の合併・買収のことを言います。
例えばある企業が新事業に進出したい場合などに、新たに自社でゼロから部署を立ち上げてその事業を行うよりも、既にその事業を手がけている会社を買って、時間と労力を節減するためなどに利用される手法です。
これにより、他社のもっているノウハウや、優秀な人材を獲得することができるわけですから経営効率がよいわけです。
そしてM&Aには「友好的M&A」と「敵対的M&A」があります。
「友好的M&A」は相手先の企業も合意した上で行うM&A、「敵対的M&A」は相手企業が合意していないM&Aです。
「友好的M&A」も事業拡大などへの期待から、株価上昇に作用する場合もありますが、実は株価にとってより影響が大きいのは「敵対的M&A」の方です。
以前にライブドアがフジテレビ(ニッポン放送)を買おうとして大きな話題になったことがありますが、あれが典型的な「敵対的M&A」です。
ある企業に対してM&Aを行うためには、その企業の株を買い占めて経営権を掌握すれば良いわけです。
一方買われる側の企業もM&Aをされないためには、自社の株を買い占めて経営権を掌握されないように抵抗します。
そう、株の買い占め合戦が始まってしまうのです。
そして「株の買い占め合戦=株の需要が高まる」というわけですので、株価は上がるというわけです。
「敵対的M&A」が行われると株価は上昇の方向に行きやすいということです。
2.TOBとは
この株の買い占め合戦の際に「TOB」が行われることがあります。「TOB」とは「Takeover Bid」の略で、株式の「公開買い付け」ということです。
買収されたくない会社の株を、買収する側が、強引に市場で買い集めようとするのが「敵対的TOB」です。(買収される側が「公開買い付け」を承諾している場合は「友好的TOB」と言います。)
例えば、買収される側の企業の株の値段が、市場で2,000円であった場合に、買収する側は、それよりも高い3,000円で買うと宣言して、投資家などが持っている株を買い集めるわけです。
投資家からしたら現状の値段よりも、かなり高く買ってくれるのはありがたいことですよね。
こうすればうまい具合に、買収する側は、買収したい企業の株を買い占めて、経営権掌握に至ることができるわけです。
一方、買収されそうになっている企業の対抗策としては、「増資による株式発行枚数の増加」があります。
分母となる株数を増やして、経営権を掌握されないようにするというわけですね。
3.上場廃止によるTOB
またTOBには上場廃止のために、市場にある全株式を上場企業の経営側が自社で買い付けるケースもあります。
実は私はこれを経験したことがあります。
私は当時、楽器メーカーの「ローランド」の株を保有していました。TOB価格は1,875円でした。ちなみに、そのひと月前の価格はローランドの株価は1,400円台でした。
さて、上場廃止にむけてのTOBが発表された時、ローランド株の市場価格はどうなったかというと、TOB価格の1,875円にギリギリ迫るくらいの金額でずっと貼り付いていました。
確かに、TOB価格より上で買うメリットはないわけで、そうなりますよね。
私自身もしかるべき手続きを踏んでTOBに応じて自分の保有株を売ろうかとも思ったのですが、市場で売っても値段がほとんど変わらなかったため、普通に市場で「売り」を入れて、ほどよく稼がせてもらいました。
ちなみにローランドの株主優待は、「新開発の楽器によるコンサート」など、なかなか楽しいものでした。
4.最近のケース
最近、私の保有している株に関連して行われたTOBは、「芙蓉総合リース(8424)」が「アクリーティブ(8423)」に対して行った、連結子会社化を目指してのTOBです。
これはいわゆる「友好的TOB」であり、上場廃止でもないものだったので、市場的には、さほど盛り上がりもないまま、あっさり終わってしまいました。
「アクリーティブ」は今話題のフィンテック銘柄のひとつでもありますが、優待はありません。
一方、「芙蓉総合リース」は事務機器等のファイナンスリースのほか、不動産リースなども手がける会社です。
こちらは株主優待があり、100株以上保有で3,000円相当のカタログギフトまたは図書カードがもらえます。
2017年2月後半現在でPBRが0.76倍なので、もしかして割安かもしれません。興味を持たれた方はチェックしてみてください。
以上、株主優待のための基礎用語〜M&AとTOBでした。株価自体は日々変動しますし、株主優待の内容も変更の場合があります。株式購入の際には、細かい内容について、ご自身で証券会社のサイトや、企業IR情報をご確認ください。