JR MARSが拓く鉄道の未来

自販機部門の荒川です。

さて、今回は、きっぷの話をします。

夏休み帰省ラッシュのときなどに、立ったまま列車に乗ったことがあるでしょうか。座っていれば、列車の揺れはたいてい気になりませんが、立っていると結構身にこたえるものです。そんなときに窓際の席に座っている人がビールを飲みながら弁当を美味しそうに食べているのを目にすると無性に腹が立つものです。

 

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梅小路蒸気機関車館のきっぷ売り場展示室1

 

だが、『みどりの窓口』のない時代には、列車の通路にたったまま帰省するのはよくあることで、希望する指定券を入手できれば幸運。2時間以上も並んでいたのに『その列車は売り切れです』と駅員が叫び結果となるのは珍しくなかったのです。

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梅小路蒸気機関車館のきっぷ売り場展示室2

≪みどりの窓口≫

しかし、昨今では、『みどりの窓口』にいけば希望の列車の座席指定券がわずか6秒で発券される。係員とのやり取りを含めても30秒程度で指定券が手に入ります。

一秒間に数十億回もの計算ができるコンピュータは目当ての列車の座席が売り切れていれば、代替列車の席を探すことまでやってくれる。普通車、グリーン車そして窓側、通路側、二人席、三人席(普通車)といった希望も叶えてくれる。隣り合わせの席にしてもらうことも可能。

1960年代に国鉄は座席予約の申し込みに人手では対応できなくなり、コンピュータ支援による座席予約装置を導入しました。これがマルス(MARS)であります。

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きっぷ売り場と案内 草津駅にて

では、国鉄時代の指定券の発行方法とは?

かっては指定席管理センターである全国の列車の台帳が方面別に回転テーブルに乗っていました。電話で各駅からの申し込みが来ると、センターの担当者が、その台帳の中から希望する日付の該当列車台帳を抜き出し、客席の有無を調べ空席があると回答して記入していました。人を介しており、しかも電話のやりとりなので間違いや同じ席を複数の人が発売してしまうことも多々ありました。

≪Key Ward MARS(マルス)≫

Malti Access Seat Reservation Sgtemの略、旅客総合販売総合システム。全国の指定券販売を一手に管理するシステムのこと。

 

マルスは鉄道の経営を陰で支えてきました。

『普通列車中心から優等列車中心のダイヤ』

『自由席中心から指定席中心の販売の戦略』

『大量高速輸送』

『在来線中心から新幹線中心の経営』

いずれもがマルスなしでは実現しなかったと云えます。

 

しかし、『国有鉄道から民営化へ』の転換の鍵をマルスと改札の自動化が握っていることは案外と知られてはいません。今年は戦後70年、その戦後の国の雇用政策の受け皿として、大量の労働者を押し付けられた国鉄は莫大な債務と大量の余剰人員を抱えたまま分割民営化されたが、企業体として蘇生するには大胆な合理化と人件費の大幅な削減しか道はありませんでした。マルスの改札の自動化が実現しなければJRの経営は立ち行かなかったでしょう。

 

そして、近年きっぷの電子化で旅が変わる。1枚のカードですべての用が足せる。すなわち、予約の処理に始まった鉄道での電子化は、乗車券の販売の自動化、改札の自動化へと進み、今は、乗車券へと変わっています。

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改札口 安土駅にて

現在主流となった、ICカードだけでも、JR東日本の『スイカ(SUICA)』、JR西日本の『イコカ(ICOCA)』、関西私鉄系の『ピタパ(PITAPA)』があります。その他、JR各社のオリジナルICカードが発行されています。ICカードはJR、私鉄、地下鉄、バス、路面電車、ケーブルカー、フェリー、店舗(ICカード加盟店)などで利用できます。

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ICカードの仕組みは、ICカードをリーダー/ライターにかざすとカードのアンテナ(カードの内部)がリーダー/ライターのアンテナから電磁波を受けて、電力を発生させ相互に通信を行いデーターの読み取り、書き込みをします。動作、周波数は13.56MHZを採用している。長所としては、読み取りと書き込み作業をわずか0.1秒で行うので、改札機の流動を妨げない通信は暗号化され高いセキュリティ性を持ちます。

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定期券とSF(ストアードフェア)両方が使用でき、乗り越しなどの際に精算が不要となります。さらには、定期券情報は、何回もリライトできるので環境面でもすぐれています。

スイカとイコカが事前にチャージしておくプリペイド方式なのに対してPITAPA(ピタパ)は、後払いポストペイ方式、すなわち決済銀行を登録し使用した分を後からまとめて引き落とします。同区間を11回以上または、31回以上乗車した場合は割引制度があります。

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また、デパートなどグループ会社との共通ポイントによる特典を用意しているケースも多い。

最後に、スイカ、イコカなどICカードの登場できっぷ(イコール)紙という常識は崩れつつあります。電子マネー機能を使って、駅ナカ、街ナカの一般商品も買い物ができるようにむなりました。

鉄道、航空、ショッピング、宿泊など旅行に関するすべてが1枚のカードで用を足すことができる時代になりました。