こんにちは、鉄道マニアの自動販売機部門 コードネーム:Rough river です。
今回は、野球開催日の臨時ダイヤについてお話します。
阪神電鉄の甲子園球場観客輸送は、他の私鉄にはない独自のものだ。
試合終了後に駅へと押し寄せる観戦客をいかに上手にさばくかの妙技には待つことがあまり
得意でない関西人も納得のテクニックが隠されていた。
90年の長きに渡る甲子園観客輸送
阪神電鉄は、阪神タイガースと切っても切れない間柄で、タイガースの成績が
鉄道の年間成績を左右する事もある。
甲子園球場では春と夏に高校野球の試合が行われ、また冬にはアメリカンフットボールの大学日本一を決める
「甲子園ボウル」がさらに各種イベントが実施されるが、年間通して断然多いのがプロ野球の試合である。
通常、甲子園駅の1日あたりの乗降客数は約5万人だが、プロ野球開催時には約10万人にまで膨れあがる。
増えた乗降客数は、もちろん野球観戦者で、試合の開始前そして終了後に集中する。
1924年(大正13年)8月に甲子園球場が完成するとこれにあわせて開放された甲子園駅が野球観戦客輸送の
要となった阪神タイガースが大阪タイガースとして誕生したのは、1935年(昭和10年)のことで翌年から甲子園球場を
フランチャイズに試合が行われ観戦客輸送がほぼ年間を通じて行われることとなった。
(一口メモ)武庫川支流の河川敷に完成した甲子園大運動場(現阪神甲子園球場)完成年の干支
「甲子(きのえね)」にちなんで「甲子園」と名づけられた。
神業とたたえられた輸送のノウハウ
往路は試合開始に間に合うように甲子園駅に三々五々やってくる。
各駅では甲子園駅との往復乗降客を用意し梅田駅の輸送本部で乗客の流れを判断しながら
梅田~甲子園間に臨時特急、神戸三宮~甲子園間に臨時急行が設定される。
尤もPitapaなどの非接触式ICカード乗降客がかなり普及した現在では往復乗降客の購入者は減っている。
甲子園球場観客輸送でカギになるのは、乗客が駅に押し寄せる試合終了後である。
サッカーなど試合時間が決まっているスポーツならば事前に臨時特急列車を設定しやすいが、
野球は延長戦に突入することもあり、試合終了の時間が読みにくい。
このため試合が始まると係員が球場の観客数の流れを把握し輸送本部に情報を伝える。
また、甲子園駅長もテレビやインターネット等で試合の状況を確認する。
試合が終わると定期列車ではさばけないため、尼崎、石屋川車庫や待避線のある近隣の
駅に停車していた車両を臨時列車に仕立てて次々と甲子園に入線させる。
満員になった列車が発車した後、すぐ次の列車が到着するという手際の良さが「神業」と言われるゆえんだ。
一方駅では大阪方面、神戸方面に乗客を分け、安全確保のためホームへの入場制限を行いながら誘導する。
これらの輸送を可能にしているのが、通常時のほか用意されている野球開催日用のダイヤの存在である。
列車は「ダイヤ」と呼ばれる運行計画表によって安全に運行されている。
そこへ臨時列車を突然入れることはほぼ不可能。
このため野球開催日用のダイヤには臨時列車をあらかじめ何本も設定して、その中で最適な臨時列車を運行するのだ。
1日最大4試合行われる高校野球開催日はさらに臨時列車の設定頻度が激しいが基本的にはタイガースの試合開催日と
同じ方法で輸送を行っている。
これらは一朝一夕にできるものではなく阪神が90年の歴史の積み重ねで実現できている。