自販機部門の船木です。
みなさんは、今、東京上野の国立科学博物館で、特別展『生命大躍進』が開催されているのをご存知ですか?
古生物との出会い
私は、小学生の頃、「ウルトラマン」などの円谷プロの特撮に登場する怪獣が好きで、その怪獣にはなんと恐竜という古代生物のモデルがいると知って、嬉しくなってはまったのが古生物学や進化論でした。元々近くのため池や田んぼでザリガニやタニシ、トンボの幼虫であるヤゴなどをしょっちゅう捕まえに行っていた私は、小学校の図書館で『前世紀の驚異』という児童書を夢中で読み、すっかり恐竜の虜になってしまい、それをきっかけに、生物の進化というものに興味を持つようになりました。ふだん見慣れているはずの小動物たちや、動物園などで見かける動物たちも、長い時間をかけて、微生物から進化をし、枝分かれをして、今日の姿になったのだと初めて知ったとき、すごく衝撃を受けたわけです。
最新の自然科学の成果では、約137億年前にこの宇宙ができて、約46億年前に私たちの地球が誕生し、約38億年前に生命が誕生したと言われています。それに比べると、私たち人類が登場したのは、どんなに遡ってもせいぜい今から約800万年ほど前のことで、1億年という単位はおろか1,000万年という単位にも及ばないごく最近のことです。
変わりゆく古生物の常識
科学の発展の速度は早いもので、昔学校で習った頃の常識は最早常識でも何でもなく過去の陳腐な学説として消えていったものもたくさんあります。例えば、恐竜(dinosaurs)は、元々ラテン語で「恐ろしいトカゲ」を意味するように、トカゲを含む爬虫類の一部門であり、変温動物でした。ところが、今や、中国などで羽毛恐竜が次々と発見され、あの肉食恐竜の代表格とされてきたティラノサウルスの仲間にまで羽毛が発見されたそうです。今や、恐竜はむしろカラフルな羽毛を持った鳥の仲間であり、卵から孵った子どもの面倒も見るような情愛深い動物だったのではないかとさえ言われています。
8月5日から第4弾の『ジュラシック・ワールド』が公開されている映画『ジュラシック・パーク』シリーズなどは、最新の恐竜研究の成果が取り入れられていると、以前何かと話題になりました。となると、ティラノサウルスにも、綺麗な羽毛を生やさなくてはいけなくなる日が来るかもしれません。
『生命大躍進』
そんな最新の科学の見解をもとに、特に専門家でないふつうの人にも楽しめるようなビジュアル番組が、NHK放送90年を記念して放映されているNHKスペシャル『生命大躍進』です。ナビゲータには人気若手女優の新垣結衣さんが起用され、一人二役で姉妹を演じています。
NHKスペシャル『生命大躍進』(http://www.nhk.or.jp/seimei/)
人類へとつながる動物の系譜の始まりと言われるピカイアが登場する第一回は、私たちが知っている現在の動物のすべての「門」が揃ったと言われる「カンブリア爆発」の頃のお話です。
現在の生物の分類は、このところの分子生物学の発展などの成果により、私が学校のときに習った内容とはずいぶん違ったものになっています。生物と言うと、古くから動物と植物というオーソドックスな2大区分がありましたが、カビやキノコなどの菌類を植物から独立させて、それぞれ別の「界」を構成するとします。ところが、それら動物界・植物界・菌界が分岐する根元には、それらの原初的な形態とも言うべき原生生物界があり、この原生生物としては単細胞生物とそれに近いような比較的簡単な多細胞生物が含まれます。ここまでは、明確に細胞に核を持つ真核生物ですが、一般に微生物と言われているものは、明確に細胞に核を持たない原核生物であり、大きく古細菌(アーキア)と真正細菌(バクテリア)に分けられます。この古細菌と真正細菌は、それぞれが、動物・植物・菌類・原生生物といった「界」より大きな括りである「ドメイン」に分類されます。そして、動物・植物・菌類・原生生物はまとめて真核生物のドメインとされます。そして、「門」というのは、ドメイン→界と来て、その下の分類であり、動物界の下に、35ほどの門に分けられます。実は、私たち人類を含む脊椎動物は、この35ほどある門の一つである脊索動物門の下のさらに小さな区分でしかないのです。
「光あれ!」
さて、多種多様なすべての動物の門が揃ったのが、時代としては地質時代の古生代カンブリア紀と呼ばれる時代の始まりであり、今から約5億4200万年前です。それまでの時代の地層からは、クラゲに似た比較的からだの柔らかい動物が中心であり、ようやく多細胞生物とはなっていたものの、まだそれほど硬い殻や骨格を持つ生き物はいなかったとされています。それが突如として一斉に多様化したのがこのカンブリア紀で、これを「カンブリア爆発」と呼びます。まるで宇宙創成のビッグバンのごとく、生物が多種多様化したので、これを「生命のビッグバン」とも呼びます。生物、特に動物界における突然の多様化は何によってもたらされたかと言うと、アンドリュー・パーカーの「光スイッチ説」というのが現在有力です。「光スイッチ説」というのは、簡単に言えば、目が開いて外界が見えるようになったものは生きていく上でものすごい強みになるため、これによって食うものと食われるものが分かれ、生存競争が激化して、生き残るために様々なボディプランが構築されたというわけです。『生命大躍進』という番組の中でも、そういったような内容について、少し触れられています。まさしく、動物たちにとっては、目が開いた途端、聖書の「光あれ!」のごとく、一斉に世界が始まったというわけです。化石動物としてとても有名な「三葉虫」もこのときに登場しました。
国立科学博物館での特別展
さて、このNHKの『生命大躍進』との連動企画として、上野の国立科学博物館で7月7日(火)から10月4日(日)まで開催されているのが、特別展『生命大躍進 脊椎動物のたどった道』です。
国立科学博物館 特別展『生命大躍進』(出展:http://www.seimei-ten.jp/)
なお、この『生命大躍進』展は、国立科学博物館の後、以下のように、名古屋市科学館、愛媛県美術館、大阪市立自然史博物館、岡山シティミュージアムと巡回予定のようです。
巡回予定:
2015年 7月 7日(火) ~ 10月 4日(日):国立科学博物館
2015年 10月 17日(土) ~ 12月 13日(日):名古屋市科学館
2016年 1月 16日(土) ~ 4月 3日(日):愛媛県美術館
2016年 4月 16日(土) ~ 6月 19日(日):大阪市立自然史博物館
2016年 7月 15日(金) ~ 9月 4日(日):岡山シティミュージアム
この国立科学博物館の名誉館員になられている小畠郁生さんこそ、私が小学生のときに読んだ前述の『前世紀の驚異』という本の著者でした。
元々国立科学博物館は、常設展だけでもかなり見応えがあり、生物の進化や生命の系統樹をめぐる展示には、真剣に見て回ると一日では回りきらないほどの相当広いスペースを使っています。特にお子様のおられる方は、この夏休みに是非とも家族で足を運んでみられてはいかがでしょうか?
というわけで、滋賀県から京都・米原経由の新幹線で、東京上野の国立科学博物館にお出かけになる方は、是非お近くのチケットライフの店舗にて、新幹線のチケットをお求めください。各店のスタッフ一同、みなさんのご利用をお待ちしております。